磐田市敷地駅構内に「豊岡敷地簡易郵便局」の建設
郵便局に長年お勤めで、ご自身が局長となる郵便局を建てられることになったS様。磐田市敷地駅の駅舎構内に郵便局をつくる計画をされました。
S様は、施工会社を選ぶにあたり複数社で相見積もりをされました。大得工務店は、以前S様のご自宅のリフォーム工事をやらせていただいた際に対応が良かったと奥様が後押ししてくださり、ご採用いただきました。感謝です。
工事前
敷地駅外観です。駅舎構内を改装して郵便局をつくります。
建物の内部です。天井が高く気持ちのよい空間ですね。
『豊岡敷地簡易郵便局』建設にあたり、下記のような条件や課題がありました。
- 天井の高い空間は開放感があり魅力的だが、空調を考えると冷暖房の効率が悪くなってしまう
- 駅舎を借りる形なので壁を解体したり、構造変更したりすることは禁止
- 退去時の現況復旧を考え、傷なども最小限に抑えることが必要
- 郵便局ということで、重要な情報を扱うことから防犯性も配慮する必要がある
これらの課題をどのように解決したかは、工事の様子の中で説明します。
工事の様子
天井の高い空間は開放感がありとても魅力的でしたが、駅舎は断熱性が高い建物ではありませんでした。
天井が元の様に高いままだと冷暖房の効率が悪くなってしまうので、天井の高い空間をそのまま活かした室内とするか、室内にもう一つ天井を張るか、お客様と何度も打ち合わせをしました。
エアコンの効きなどを考慮して低い天井とする案を採用し、一般的な室内空間の高さに抑えるために、天井をもう一つ張ることにしました。
元々ある外周の壁は解体できないので、元々の壁の上に下地の木を取り付け、さらに内側に壁を造っていきます。
内部の壁はコンクリートの土間へのダメージを最小限にするように土台となる木材をコンクリートビスで固定し、そこに柱となる木材を組んでいきます。この方法は、解体時、復旧がしやすく、傷なども最小限に抑えることが できます。
作業スペースとなる床は、写真のような金属製の束を使って構造的な木下地から造っています。
床の段差はあまり大きくしたくありませんが、構造の一番のベースになる大引きは太いものを使いたかったので、写真のように材料を欠いて加工して施工しています。
下地の間には土間の冷気で冬場に底冷えしないように断熱材を入れます。その上に24mmの合板で床下地を張り、仕上げのフロアを施工します。
このやり方は新築をするやり方と似ており、手間がかかる方法です。もっと簡単に下地作りをする方法も色々考えましたが、あえてこの方法を採用したのは下記の理由からです。
- 退去時には現況復旧を求められるので、接着剤などを使わずビスだけで済む方法とする必要があったため
- 郵便局専用の重量のある機械を設置するため、重さに十分耐えられる木下地にする必要があったため
- 元々のコンクリート土間が完全に水平になっていなかったため、床下地を水平に調整できる金属製の束を使う必要があったため
ドアの枠や壁下地などを取り付けていきます。
外壁の内側に取り付けた横の木を胴縁(どうぶち)といいますが、こちらは壁の下地を細かくすることで壁をしっかりさせる目的と、完全に平らではない元々の内壁との間に壁を平らに調整できる部分を取ることが目的です。
この平らを調整しながら木下地を施工する工程は非常に手間がかかります。その上、完成すれば見えなくなる部分ですので省くこともできるのですが、下地がしっかりできていないと後々仕上げのクロスが割れてきたり、壁が波打って見えたりするリスクが高まってしまいます。
後々、というところが曲者で、完成後すぐには不具合として分かることはありませんが、2〜3年経った時に不具合が出始めて気づくのです。
大きなお金をかけて工事させていただくのですからなるべく長くキレイに使っていただきたい、だからこのような工程は非常に大事です。 郵便局内に設置する設備等の計画を元に重いものを固定しても問題が起こらないよう壁に下地を入れていきます。
室内にもう一つ部屋を造る場合、気になるのが室内の明るさです。照明器具だけではなく自然の明るさを採り込むため、室内には大きな天窓を2つ計画しました。
当社で加工した木材を組んで骨を造り、樹脂製の透明の板を設置する手製の採光窓です。
物置などの裏方の室内の壁は、下地と仕上げを兼ねる※OSBボードで施工していきます。 OSBボードは輸入材料になりますが、生産地によって耐水性や色味が大きく異なります。
今回採用したのは仕上げ材として使っても違和感のないキレイな色味で、耐水性も高い欧州産のOSBボードです。
※OSBボード:OSBは、Oriented Strand Board の略で、長方形の薄い木片を繊維方向が直交するように重ねて高温圧縮した「構造用木質ボード」で、上下左右の地震力に対して抵抗力を発揮します。硬くてツルツルしていて、蹴っ飛ばしてもビクともしません。また下地としても有効で、ビスや釘をどこにでも打つことができます。
来客スペースと従業員スペースの境でもあるカウンターを造るため、下地を組んでいきます。
水道の配管を取り入れ、給湯用のミニキッチンも設置しました 。お湯を沸かすための給湯コーナーで、右側にIHクッキングヒーターを置きます。右の赤〇部コンセントがIH専用のコンセントです。
また元々あった火災報知機や誘導灯はきちんと機能するよう配慮します。
水道工事
今回の工事では水道工事も行いました。アスファルトを掘り返して、配管を入れて繋ぎます。
元通りにアスファルトを復旧します。
完成
入れるものを細かく伺って綿密に設計したカウンターは、テーブルや階段材としてもよく使われるゴム材を使用しました。強度があり机に適しています。カウンターの正面は無垢の杉材を張りカウンターと同色の自然塗料で塗装しています。
裏側からみた状態となります。
来客スペースと従業員スペースの境のカウンター横には、特注で開閉式の小型扉と跳ね上げ式のカウンターを設置しました。
カウンターのすぐ下には掲示物などを吊ることができるピクチャーレールも施工しました。写真では見えにくいので磐田市敷地郵便局へ行かれる機会がありましたら是非確認してみてくださいね。
当社、手製の採光窓の完成写真です。自然光が入ってくるので昼間は明るく、天井に開放感が生まれました。天井を低くしたことで冷暖房効率もよくなっているので、郵便局営業時の節電に大きく貢献するものと思います。
物置室の天井も採光窓を付けています。出入り口のドアも付けました。
室内には換気扇がないので他の部屋から通気を取るために通気口を設置しました。
各部屋にエアコンを設置しました。
外部にはセンサーライト、防犯カメラ、防犯を強化するため窓に面格子を取り付け、防犯性も考慮します。
従業員スペース間の通路には渡り廊下を設置しました。端材として余っていた無垢の床材を組み合わせて造りました。こちらも下の土間を傷付けないように可動式にしてあります。
でもがっしり作りすぎて、大人2名でやっと持ち上げられる重さになってしまい、 搬入には非常に苦労しました・・・。
センサーライト、防犯カメラ、郵便局マーク,表札を取り付けます。郵便局ということで、重要な情報を扱うことから防犯性を配慮し、防犯カメラ数多く配置しました。
これで建屋の準備はほぼ完了です。
『豊岡敷地簡易郵便局』営業が開始されました!
造作カウンターでの業務をされている様子です。カウンターの木の温かみが空間のアクセントになっています。造作カウンター下のピクチャーレールも活用して頂いています。
これから長い時間この郵便局の顔としていい雰囲気を出してくれると思います。
郵便局マークの入った駅舎と開店時の郵便局内部の様子です。ピクチャーレールが活躍しています。
近くに行かれたときは是非寄ってみてください。S局長が笑顔で迎えてくれます。
S様、そして大得工務店を後押ししてくださった奥様、ありがとうございました。